侍戦隊シンケンジャー・最終回を終えて〜シンケンジャー対ゴーオンジャー銀幕BANG!

 息子と初めて一年間通して見た作品が、ついに最終回を迎えました。なんだか感慨深い。ついでに公開中の映画も観てきました。
(以下ネタバレ)
 いつから練っていたプロットかは分かりませんが、シンケンジャーは「5人のうち、一人が殿様で、あとが家来」という独特な設定を活かし「封印の文字は殿様しか使えない」というプロットを踏まえつつ、、後半で「主人公は実は殿でなく影武者だった」「ホンモノの殿は姫様だった=歴代初めて女性のレッドが誕生」「ホンモノの姫様が封印の文字を使うが、効かなかった」「姫様が主人公(影武者)を養子にして(!)次の殿様にし、最終決戦を託す」「とどめを刺すのがレッドではなく、サブリーダーのブルー」と怒濤の畳み掛けをしてきました。
 これ、子供がついて行けるんかいな(笑)? と内心思いつつ、親たちはかなり楽しんでいた可能性がありますね。まあそれもあって、親子で「シンケンジャー面白いよね!」というのが、番組の人気に繋がってゆくと思うのですが。親がつまらんと思ったら、視聴率は上がらないでしょうしねえ。

 ひとつ気にくわないのが「玩具を売らなければならない」という番組構成で、そもそも二月に新番組というのが「クリスマスと正月で売り尽くしちゃえ」的な臭いがしてイヤなわけです。誰もが思うこの構造に風穴をあけたのが仮面ライダーで、9月スタートが大当たりして、この年末商戦は大ブレイク、仮面ライダーWとついてりゃ何でも売れる的な流れに繋がったわけですね。いまだにグッズがろくすっぽありゃしない。

 それはさておき、シンケンジャーも終盤の玩具攻勢には閉口しつつ、「子供番組で剣戟をやる」という重々しいテーマを見事にこなしたシナリオ執筆陣には頭が下がる思いです。実際泣けるんですよ、子供番組のくせに(笑)!
 終盤は「主人公が嘘をついていた」という事実が重く影を落とすわけですが、それを引きずりすぎる主人公に殴りかかり、ふとかわされて「よけんじゃねえよ!」と言って殴り直し、「これで嘘はチャラだ」と言い放つシンケングリーンには、ちょっとホロリときました。一年間のドラマですからそれまでにも色んな積み重ねがあって、このグリーンはきかん坊で、負けず嫌いで、ちょっとおちこぼれ気味で、懸命に成長してきた背景があるんですね。一番視聴者が感情移入しやすいキャラクターが、歌舞伎や京劇の1シーンよろしく「待ってました!」という感じのスカッとする演技をしてくれるので、すごくキたというか、もう、感無量でしたね。よく言ってくれた!と。

 敵方のプロットの始末の仕方も、一人一人丁寧でしたね。
 前作「ゴーオンジャー」が、敵をコミカルに描いた結果、最終最後の大ボスを最終回間近に突如登場させざるをえず、物語の一貫性がいまひとつだったのに対し、今回は徹頭徹尾大ボスが「悪の根源」として描かれ(かつ人間味までもたせるという離れ業!)、敵首脳陣も各々素晴らしい最後が用意されていて、溜飲を下げる思いでした。

 あまりクローズアップされないと思うのですが、個人的には、骨のシタリの最後が一番「らしく」て好きでしたね。
 「あたしゃ生きていたいんだよ」と何回か布石を打ってきたシタリですが、最後まで六門船に乗って沈んでいくとは・・・。ボスの中では、かつてない最期でしたね。

 もう一回最初から見返してもいいかもしれないですね。それくらい楽しく見ることができました。時代劇としてはあくまで子供用なわけですが、子供だましと笑えませんよ。特に、爺役の伊吹吾郎さんの存在がでかい! 他の演技が軽かろうが、「控えよ!」と伊吹さんが言うと、ビシッと締まるんですね。「ジイが見守る中、若い侍が成長してゆく」のが、演技にも現れていたのではと。時々ある爺の殺陣は、見ている親たちへのファンサービスと見た。

 で。

 その感動も冷めやらぬまま、日曜は「シンケンジャーゴーオンジャー銀幕BANG」を息子と二人で鑑賞。
 この「VSシリーズ」はもともとVシネマ作品だったものが、ゴーオンジャー人気が乗じて昨年から劇場作品となったもの。上映時間は1時間ですが、まあ子供たちにはそのへんが限界でしょう。昨年も「ゴーオンジャーゲキレンジャー」を見に行ったのですが、なんというか・・・上手くブレンドされていない感じでした。

 が、

 今年は大違い!

 明るい「ゴーオンジャー」と重々しい「シンケンジャー」がどうシャッフルされるかが正直心配だったのですが、言い意味で裏切られました。
 さすがに13人いる戦士たち全員を個性豊かに・・・とはいきませんでしたが、レッド同士の決戦といい、その後の逆転への流れといい、いい塩梅でしたね。「一緒に戦おうぜ」という単純すぎる流れじゃなかったのが良かったんじゃないかと思います。よく考えてみれば、お互い別々に戦っていた同士が、ある日突然「よし一緒に戦おう」なんて信頼関係を築けるはずもないわけで。そこのくだりが、短い時間で上手く消化できていたと思います。シンケンレッドの人見知りキャラを、上手く使ったなあと。

 そして、なによりエンディングが白眉! このためだけにブルーレイが出たら買ってしまおうかと思うくらい。まさかゴーオンジャーのED曲にあわせてシンケンジャーが踊るとは・・・これが楽しいし、見ていて気持ちいい! 最高の読後感でした。プロットが消化不良だったらここまで思わなかったんでしょうけど、一年間見てきて、寂しげながらもストンと納得のいく終末を見、二大戦隊が見事にミックスされた映画を観て、これまた満足のいく締めくくり・・・親も悪くないなあ、と思った瞬間でした。